スチームプリズン 七つの美徳 感想

全体の構成

攻略キャラは6人(2人×2ルート+1人+1人)いて、多少の攻略制限がある。

ただヒロインを取り巻く陰謀や黒幕についてはキャラによっては全く解決されないまま物語が終わったりする一方、全て解放されての大団円に近い終わり方を迎えるキャラもいるので、その辺りの真相格差*1や運命力*2がかなり大きいので、本命キャラのルートであってもヒロインの問題が解決しなかったりして不満が残ったりするかもしれない。

推奨攻略順は

エルトクリード→ウルリク→アダージュ→イネス→(攻略制限)→ユネ→フィン→グランドエンド

で真相格差もだいたいこの順番。(フィン、グランドエンドは別にして)

エルトクリードのエンディングではベストエンドでもヒロイン周りの陰謀や上界下界の謎はほぼ明かされないので注意が必要。

エンド数はエルト・ウルリク・アダージュ・イネスは各自5つ、ユネが6つ、フィンはVita版で追加されたキャラなので3つと少な目。

割り振りはグッドエンド1つ、好感度高バッド、好感度中バッド、好感度低バッドと、2人セット√におけるもう片方のキャラと生きていくエンド(その場合の本命キャラは死んでたりする)になっている。

必ずしもそうじゃない場合もあるけどだいたいこんな感じ。

それに加えて各ルートで落ちることになるバッドエンドが3つと大団円エンドが1つ。

スチル数はユネまでが12、フィンが8。ストーリースチルと思われる特定の相手がいないスチルが20。

 

システム

一般的なノベルゲーで、好感度の上下もすぐに表示されるので攻略しやすい。スキップ速度はかなり快適だと思う。

クイックセーブ、クイックロードはスタートボタンとセレクトボタンのひと手間で可能。

特にクイックロードはバックログの台詞再生画面(わかる?)からもさっと戻れるので、かなりプレイしやすい。

章立てになってないので章ジャンプも選択肢ジャンプもできないけど、台詞スキップがかなり早いので周回も苦ではなかった。

スチル&立ち絵

  • スチル

ちょいちょい骨格が変な絵がある気がする。私自身絵心がないので正確な判断はできないけど、人によっては微妙なレベルだと思う。

  • 立ち絵

エピローグでの話になるけど、もうその役職についてないのにその衣装を着てて誤魔化すみたいな台詞が挟まれるのが不満。

その立ち絵ぐらい用意してほしかった。

ヒロイン

正義感溢れる男勝りな警察官ってことでおしとやかでも大人しくもなく、トラブルに自分からつっこんでいって納得できなければ「そこは逆らったらあかんやろ」って場面でも堂々と不正をただそうとするので、振る舞いや口調に慣れないとヒロインについていけなくて挫折するんじゃないかな…。

ただヒロインの信念や正義、極端な鈍感設定(ヒロインの出身社会は恋愛禁止法があり恋愛に絡む感情は罪とされてる)にもしっかり裏付けがあるため、ヒロインのキルス・ティステラを一人のキャラとして好きになれたら楽しめる。

いい意味でまったく恋愛脳じゃないので、恋の芽生えと気づきにモダモダさせられるのが好きならとてもオススメ。

おまけ要素

クリアしたキャラはグッドエンドのアフターストーリーが用意されてて、その後のフォローも完璧。キャラ視点、ヒロイン視点の両方からお楽しみいただけます。

プロフィール画面では攻略対象同士がお互いにどう思ってるかの一言コメントが用意されてて「給料上げてほしい」「実直な男」から「あんまりよく知らない」「誰?」みたいなあって意味があるのかないのかわからない評価が見れてちょっと面白かった。

あと物語本編の過去話や、バッドエンドのアフターストーリーなんかも収録されてるのも憎い。それからおなじみキャストコメント、馴染みのない声優さんのもあるので新鮮だった。

ニューゲーム選択時とか、おまけ要素をぱらぱら見てるとき、キャラが反応してくれるのが嬉しい。アルバム選択で「一緒に見る?おいで」BGM視聴画面で「いい曲だね」みたいな感じ。タイトルコールに脇役が口を出すのもご愛嬌。

↓以下、キャラ個別感想↓

 

 

なんか洗脳っぽくない?

ヒロインが恋愛のれも知らない完全純粋培養無垢処女だってのをいいことに、さんざんキスしてはコレは恋だと教え込むようなやり方で、ヒロインがエルトに惹かれていく気持ちを否定したくはないけど、雛鳥への刷り込みみたいで不安が残る。

大銀行の頭取として、地区の代表として背負っているものや、他者からの期待通り振る舞ってて自分の中身が空っぽで…みたいな葛藤と、それに対するヒロインの激励(?)を通じて自分のやるべきことを見出すので、エルトにとってはヒロインは運命の一つなのかもしれないけど、基本的に順風満帆というか…もっと悲惨なもの抱えてる男にヒロインとの運命を譲ってやれよと思わなくもない。

メインヒーローの顔をしてるくせにヒロイン周りの陰謀についてはノータッチで全く謎は明かされず、終盤のピンチに対しても自分が表に出てどうのこうのではなく知略と人脈と財力を生かして動かし打開するので、流れるように騒動が収束していく。

私(ヒロイン)必要だったかなこれ。まぁ必要だったんだろうけど……。

あ、必要必要。自身の存在理由のため、死地に行こうとするエルトを止めるための決闘は熱かった本当に。「あなたの命を守るため、あなたに戦いを挑む」背反を掲げ剣を構える姿、マジヒーローなんですよヒロインがね。かっこいいので見て。

運命度と真相格差についてはダントツで低い気がするけど、その分恋愛強者としてこのゲームの平均糖度を一人で上げてるのでは?キスの場所の格言とか久々に見たわ。

あとさすがのリップ音。前世の一つに防衛部がある貫禄MAXでした。

 

ウルリク目当てで買ったので初期の本命。

ツンツンツンデレ思春期まっしぐらの同い年の裏業界美少年。好きやろ。好きです。

正直に言うとほぼほぼ甘さはない。甘酸っぱさだけでできているシナリオで、恋愛かどうかに関してはときメモの方が恋してる。恋愛強者のエルトにさんざんからかわれるのがひたすらにかわいい。

祖先絡みの諸々でめちゃくちゃ上界出身者を嫌ってるので、序盤はなつかない他人の家のネコを少しずつ慣らしていくようなシーンが多く、普通に喋るよりも口論と軽い罵倒がほとんど。それでもヒロインを見捨てない(仕事だし)し、同じ時間を過ごすうちに情が沸いて棘が取れてくるのはまるで他人の家のネコがすーっと一瞬すり寄ってくれるような嬉しさがある。

読書が好きなので中盤~終盤にかけては恋愛小説を通じてのやり取りが発生し、ヒロインもそれを読みながら恋とはどんなものかしら?を学んでいくんだけど、いかんせんウルリクもあたたかい過去を持つキャラではないので恋なんかしたことないのでめちゃくちゃもどかしい。デートしたことあるとか強がらなくていいんだよ。

エルトが恋愛強者からの導きによる恋なら、こっちは一緒に探っていくような恋で、まだ恋じゃないのかもしれないけど、等身大で青春で、バッドエンドで寄り添って死んだのも忘れられるような爽やかな物語でした。(ただし陰謀はほぼ明かされないぞ!)

高塚智人のツンツン思春期と命乞い泣き演技が聞けるのはスチームプリズンだけ!

 

26歳元医者とLDKするシナリオなんだけど、アダージュルートの何がいいって、ヒロインの方から告白(仮)をするんだよ。好きです的な告白じゃないんだけど、それに対して「お前は、俺が好きなんだ」と診断を下すシーンで落ちない女いねえでしょという感じ。

上界出身だけど医者ってこともあって、「子どもは添い寝したら政府から運ばれてくる」みたいな天然ボケかますヒロインに対しても真正面から説明しようとするし、ある程度の知識もあるのでエルトに続く恋愛強者だと思われる。ゆえにけっこう甘い。私がはしゃぎまくった口移しシチュ*3も完備。さすが医者。信じてたよ…。ぶっきらぼうクールキャラかと思ったら天然なところもあるし、率直でものをいうところがヒロインとも似てて、軽快なやりとりがお前ほんとに26歳かよと思わせてくれる。口論レベルはウルリクとそう変わらない。

大人の男な余裕と、大人げない部分に振り回されるうちにヒロインに迫る闇の手……ってことで、ここでヒロインを取り巻く陰謀が1つ明らかになる。けっこうえぐい。あとバッドエンドの一つだけど、生きたまま目玉をほじられるのもアダージュくんだけだった。古川慎の演技よ…(震え

えぐいんだけどこの辺り、アダージュのメンタルがグズってて使い物にならない。

前半2人はトラブル絡みでヒロインと対立したりはするんだけど、メンタルがグズることはなくて、たぶん全攻略対象でメンタルをグズらせてヒロインを追い出して引きこもるのはアダージュくんだけだった。

しゃんとせえアラサーやろ。

ただそれも弱メンやんけと思わせないちゃんとした事情もあるし、うまいことイネスくん(下記)がはっぱかけて火つけてくれるので問題ない。っていうかイネスくんがいなかったら好感度最大でもラストで死んでたやろお前。しゃんとせえよ…。

 

燻製を作れるらしい。農家出身29歳。

正直ダークホースだった。シナリオの先が読めなかったんだよな~。

突然「上界のことを教えてくれ」ってヒロインに家庭教師を頼むからこのまま仲良くなるのかな?って思ったら割と早い段階で急展開を迎えるし、大団円を除けば実は世界が一番よくなってるEDに行きつくのがイネスくんだったりする。

アダージュくんルートでは陰謀の1つは明かされても癌になってる黒幕の駆逐にまでは至ってないのに比べて、イネスくんはめちゃくちゃピンチに陥る反面、根こそぎ悪者を退治しちゃうからすごいぞ。

あともっとすごいのが乙女ゲーで1つは枠が用意されてることが多い「実は幼少期のヒロインに出会ってて、ヒロインのその後を決定づけた」運命キャラがイネスくんだったのには腰が抜けそうになった。わざわざ相棒キャラのフィンがいながらですよ。

やべえ、勝てねえ…あと割と他のキャラEDではグッドエンドでもフィンくんが死んでるの(か消息不明)に、イネスくんの場合はフィンが生存してるのも大きい。大丈夫?病まない?相手がイネスくんだし、ヒロインが警察官になったきっかけの運命だし、大丈夫かな…。

世界に対して強い。さすが不屈の男……あとところで上界出身だし、下界に来てもスラムの女と好き勝手遊んだりしてない風に言ってたけど性経験はどうなんですかそこのところ。ねえ。どうなんですか。あすなろ抱きの男よ答えてくれよ。

 

  • ユネ・セキエイ(CV:高瀬泰幸)

見た目は好み(銀髪美少年だ~いすき)だけど声にクセがありすぎてどうかと思ったんだけど後半戦に至ってドハマりしてツイッターで気狂いになった原因のキャラ。助けてくれ。

少年のような青年のような、でも実年齢は400歳を超えてる合法ショタジジイなので、少年のようにも老人のようにも聞こえる不思議な声がめちゃくちゃマッチしてるのがすごいと思った。

乙女ゲー界隈ではほぼ名前を聞かない人だし、演技も乙女ゲーじゃないというか、台詞と声色にギャップがあることが多くて、それもまた新鮮だし、でも400年のほとんどを空虚に生きてきたから精神年齢が歪んでいる、と思うと腑に落ちる部分も多かったのがよかった。

いやすごいんですよホント。でも合わない人は合わない声なんだろうなとも思う。そしてハマると、乙女界隈作品にまったく出演してないのですさまじい飢餓を覚えることになる…。

っていうかユネ様設定盛りすぎでは?ダントツの真相度を誇る。

不老不死なので殺してほしい、からシナリオが始まって、なぜ死なないのか、なぜ死ねないのか、なぜ死にたいと思っているのかの掘り下げから、400年前の真実からフェリエ家との因縁から(ウルリク攻略後の制限がかかってる)あって、それだけでもお腹いっぱいなのに、不老不死で誰にも傷つけることはできない触れることができない「神の祝福」という名の呪いがかかってるので「ヒロインと触れあうことができない」からの「人としてヒロインに恋をしたら神の祝福が弱まって死ねる」展開に持っていかれるのでもうめちゃくちゃなんですわ。

どうやってキスもせんと恋しろってんだよなぁエルト。聞いてるかエルト。

あと作中屈指のひどい目にあうので、プレイ中に「好感度MAXなのになんでバッドエンドやねん!?もしかしてグッドエンドにも攻略制限があったり!?それともフラグ見逃した!?」と慌てたりもした。勘弁してくれ。つらい。

あとさすが(?)ユネ様、ED数が1つ多くて6つあるんだけど、その中にユネ様じきじきに手を下して殺していただけるバッドエンドもあるんよな。

途中でヒロインに対する好意を自覚する(ここで神の祝福と恋心のトレードオフに気付くんだけど)までは無慈悲&無慈悲だし、ヒロインを失いたくないってちゃんと思ってくれるまでも無慈悲なので、好感度結構高いのにめちゃくちゃ冷たい声をかけられて殺されるEDもある。

その分、人間としての恋と感情を取り戻して、ヒロインと生きていこうとする姿の可愛さが際立つんだよ。かわいい。でも演説シーンは凛としてるし、そういったギャップにやられたんだと思うね。

あと人としてのエゴを殺し、人のため民衆のために「役割」を果たそうと生きてきたキャラに弱いのもあるのかもしれない。その点ではエルトも好きなんだけどいかんせんキスをチュッチュチュッチュとしてくるので…。

もしかしたらヒロインじゃなくてもユネ様の運命を拓いたかもしれないし、ユネ様はヒロインの運命じゃないのかもしれないけど、一緒に駆け抜けた時間が2人を運命にしたのだと信じたくなる。

幸せになってほしい…。

 

  • フィン・ユークレース(CV:新垣樽助)

逆にPC版だとフィンが非攻略対象だったってのが残酷すぎて死ねるんだけど…。

追加攻略キャラだから全体的にとってつけた感があるのは気になるけど、でもフィンが幸せになれる世界線もあるというだけで救いにはなる。

EDが3つしかなくて、二人とも死ぬかヒロインが死ぬかグッドエンドかなんだけど、いやでもグッドエンドで結婚して1年も経つ言うてるのにセックスしてないって大丈夫かよ。よく我慢できたね…。

他キャラルートだと、キャラを殺してヒロインを攫って無理やり…暗転…とかのエンドがあるから不安になってしまう。

 

まぁでもグランドエンドは実質フィンに軍配があがるのでは?

俺も俺も僕もなハーレムエンドじゃなくて、フィンに「ヒロインとどうなの?ちゃんと告白できたの?笑」みたいな雰囲気だし、頑張れば一番未来が明るいのは君だ!

イネスくんと張れるぞ!

まぁただ私はユネ様贔屓だし、グランドエンドはユネ様はヒトになれないのであれなんですが…でもやるべきことを見出したから、他のルートのユネ様よりは断然楽しそうなのでよかったのかな。

 

ところでただいまワンダーグー店舗特典のユネ&フィンのドラマCDを探してるんですけどお持ちの方だれかいらっしゃいませんかね…売値交渉に応じますので…

*1:ヒロインや物語の根幹に関わる問題に触れたり解決したりできるかどうか。恋愛糖度や運命度とはまた違うため、ラブラブエンディングであってももやもやが残る原因になったりする

*2:うんめいぢから、あるいは運命度。過去に出会っていたなど物語開始要素に関わっていたり、二人の恋が実ることで世界にもたらすものが莫大なものであったりすると高い、と判断する。耳を澄ませば<もののけ姫

*3:心身が弱っている相手に薬・水を無理やり摂取させる行為のこと。もののけ姫を見てくれ